タイムマシーンなんて
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いつの間にか冬が終わり春らしくなった。
家の近所の並木道の風景が、日々、夏に向け更新しているようなこの頃である。
実感として、季節の境目に対する感動がなくなった。
冬の終わりや夏の始まりというのに対して、昔はかなり敏感だったのに。
でも今は、そこにいちいち感動できなくなっている。
年をとるとはこういうことなのか、
「慣れ」は、楽しみを奪うものなのか、
そう思ったあとに、なんだか通俗的にしか感動を表現できない自分の想像力やボキャブラリーの貧困さにがっかりする。
この時期の電車内、髪の毛の色がやたら黒い、スーツ姿の男女が目立つ。
大学を卒業したばかりの新入社員である。
満員電車の初心者でもある初々しい新社会人たちはもう、同年代ではないのだ。
何か刺激を受けよっかなーっと意識的に一時的に感受性を豊かにしてみるものの、4年前の自分を思い出すわけでも、気がひきしまったわけでもない。
むしろ胸に小さな穴が開いたような空虚な気持ちになる。
そしてもうここまでくると、いったいいつになったらタイムマシーンはできるんだろう、できたらいつに戻ろっかなーっと、妄想を膨らませる。
そうしているうちに、少しずつ少しずつ穴は埋まっていく。
シュー、シューっていう切ない音をたてながら。
それでもホントのところは、ほとんど振り返る時間もなく、毎日毎日悩んで笑って一生懸命仕事しているのです。(蒼)