トイレで煙草を吸う同級生
広告
先日、全面禁煙になったJRのとある駅構内で旧友に再会した。
ヘビースモーカーだった同級生の彼は、立ち話の10分間に、自分の近況報告にはじまり、自分が持っているほかの同級生の情報を喋っていた。
誰々が結婚するらしい、誰々が音信不通らしい、誰々が付き合ったらしい……。
彼をはじめ、周囲のめまぐるしい変化に驚いてみる。
みんなは動いていて、僕だけが停まっているような錯覚に、実に数年ぶりに陥った。
たとえばプライベートとパブリックの差が、ほとんどなくなっていくのだろうなと思ってみる。
そして、いささか焦る。
「禁煙か~~」といって、今もまだヘビースモーカーだという彼は、「世の中、とくに日本は喫煙者を不当に排除している」と力説する。
(どうでもいいけど煙草の話をするな! 吸いたくなるから)と心のなかでつぶやく。
奇しくも2人は同じ方向。
電車が来たから乗ろうとすると、彼は「オレ、まだ時間あるから、トイレで煙草吸っていく」と言う。そして、「一緒に行くか?」と僕を誘うが、当然断った。
高校生じゃあるまいし。
未成年でもあるまいし。
でも、喫煙者はどんどん肩身が狭くなる。
なるほど、社会的未成年者、というわけか。
それにしても、走ってトイレに向かう彼の後姿を見ながら、ほんの少し、ほっとした。(蒼)