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権利

私、私たちは問われている/最後の地裁判決を受けて

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去る3月14日、高校無償化訴訟の福岡判決が言い渡された。地裁段階では最後ゆえ、高裁含め全国5か所での争点が網羅されていた。とりわけ東京高裁で浮上した不指定処分の二つの理由が孕む論理的矛盾(28―29頁参照)への判断が期待されていたが、裁判長は法と良心を擲ち、相も変らぬ規程13条適合論に逃げた。七例目とは思えぬ空疎な判決だった。
裁判所前の歩道では現役生徒が泣きじゃくり、傍らで卒業生が闘争歌を絶叫する。各地から駆け付けたオモニたちが「不当判決糾弾」などのコールを連呼する。裁判所の敷地内には職員が無機質な建物と同一化したかのように張り付き、構内で唱和した者に駆け寄っては「敷地内でのデモは禁止です」と繰り返す。「じゃあどこに行けばいいんですか!」。その叫びは、彼彼女らの状況を象徴していた。メディアを媒介に、差別が官民間を循環増幅し、司法がそれを是とする。至る所に浸透したヘイトによって、朝鮮人が朝鮮人として生きられる場所が削られ続けているのだ。
この間、二度と見たくない光景を幾度も目にしてきた。「あんまりだ!」と絶叫した保護者。「絶対に諦めないから」と叫びながら、両脇を同胞に抱えられて退廷するオモニ。傍聴席でへたり込んだ教師もいれば、思わず「人殺し」と叫んだ者。敗訴判決の要旨が読み上げられている間、目を瞑り、掌を合わせた者もいた。祈っても判決は変わらないが、それでも祈る他なかったのだ。法廷を出た途端に泣き崩れた原告、裁判所前の歩道で互いの肩に顔を埋めて泣いていた生徒たち。横断幕を握り締め、涙で一杯になった目で裁判所を見据え、「我々は諦めない」「勝つまで闘う」と唱和していたオモニと支援者たち――。

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(写真上左から)勝訴判決に喜びがあふれる弁護士、生徒ら(1、2枚目、大阪市北区で2017年7月28日)/振り上げたこぶしに勝訴への決意を込める原告、支援者ら(東京都千代田区で17年9月13日)/涙ながらに「不当判決」と書かれた紙を示す原告代理人の弁護士(名古屋市中区で18年4月27日)/(中)控訴審での逆転敗訴に抗議する原告関係者ら(大阪市北区で18年9月27日)/(下左から)支援への感謝と未来への決意を込めて歌う生徒ら(北九州市小倉北区で19年3月14日)/逆転敗訴後の記者会見で思いを語る保護者(大阪市北区で18年9月27日)/記者会見で言葉に詰まる原告(広島市中区で17年7月19日)/敗訴判決後に裁判所を見つめる生徒ら(北九州市小倉北区で19年3月14日)

写真:中山和弘

なかむら・いるそん●1969年、大阪府生まれ。立命館大学卒業。1995年毎日新聞社に入社。現在フリー。著書に「声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々」(インパクト出版会)、「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して」(岩波書店)、「ルポ思想としての朝鮮籍」(岩波書店)などがある。『ヒューマンライツ』(部落解放・人権研究所)の「映画を通して考える『もう一つの世界』」を連載中。


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