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コラム

安倍談話を読んで思い出した 孫基禎さんの顔

ポドゥナムの里から


二十年前の五月のことです。
わたしはNHKのドキュメンタリー番組で、当時八十三歳だった孫基禎さんとお逢いしました。
ソウルのオリンピックスタジアムでした。
誰もいない観客席で待っていると、コツコツと杖をつく音がして、わたしは振り返りました。
斜め後ろの入場口から姿を現した孫基禎さんは、ゆっくりではあるけれど確かな足取りで近づいてきました。
孫基禎さんは、日本男子マラソン史上唯一のオリンピックのゴールドメダリストです。一九三六年のベルリンオリンピックで二時間二十九分十九秒二のオリンピック新記録を出し、朝鮮人でありながら日本人選手として表彰台に立った人です。
そして、わたしの祖父もまた日の丸を胸につけて走った長距離ランナーで、ベルリンオリンピックの四年後に予定されていた(戦争の激化で中止となった)東京オリンピックへの出場が有力視されていたのです。

 

 

 

 

 


リュウ・ミリ●作家

1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。


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